藤本渚、推し(笑)

 見出しに(笑)を付けたが、「藤本渚」に(笑)を付けたのではなく、藤本渚を推していることに対して(笑)を付けたのでもなく、昭和のおっさんが「推し」などという似合わない用語を使ってしまったことに対する(笑)である。

 私は将棋に関しては、20代の広告代理店勤務時代に会社の先輩たちと結構やっていたことはあるが、今は専ら“観る将”。好きな棋士は断然羽生善治で、次いでギリ次の世代の渡辺明と、その次の世代では豊島将之。その下の“AI世代”は「すごいなあ」という感じで見てはいるものの、ここまで特に思い入れのある棋士がいるというわけではなかった。ところが、その“AI世代”に出てきた私の注目棋士が、高松市出身、高松北中から大阪に行ってめきめき頭角を現してきた「藤本渚」(18歳、まだ5段)である。

 彼は確か2年ぐらい前に三段リーグを突破して史上最年少棋士(四段)になってプロデビュー。そこからいきなり6連勝して、7戦目の「竜王戦」6組の予選で対局会場を間違えて不戦敗になって連勝が止まるというおちゃめなプロフィールの持ち主であるが(笑)、その後がまたすごくて、昨年度はあの藤井聡太と最後まで最高勝率争いを繰り広げ、プロ2年目にして「8大タイトル」(王将、棋王、叡王、名人、棋聖、王位、王座、竜王)のうち、叡王、王位、王座、竜王の4つも予選を勝ち抜いて挑戦者決定リーグやトーナメントに登場。しかも、王位戦では羽生や渡辺、豊島らに交じって藤井への挑戦権獲得にあと一歩まで迫ったという天才ぶりを発揮している。

 そして今年は間もなく、藤井への挑戦権を賭けた竜王戦の11人による決勝トーナメントが始まる。藤本は一番下の「6組」の優勝者として出場するので、挑戦権獲得までに渡辺和史、高野智史、斎藤慎太郎、広瀬章人、山崎隆之の5人を連破してもう一つのブロックを勝ち上がってきた相手との三番勝負を突破しないといけないが、「やるかもしれない」という期待は十分、いや六分ぐらいはあるかもしれない。さらに今行われている王将戦の予選も二次予選に進出して、あと3勝すれば年明け早々に行われる予定の挑戦者決定リーグ戦に進めるというところまで来ている。

 今年の3月、高松北高の校長先生に頼まれて(「私は中学生に話すようなネタを持っていない」と言って逃げようとしたのに無理やり押し込まれて・笑)藤本の母校の高松北中で出張授業をやってきた。その時は特に藤本の話題は出なかったが、彼はそう遠くない将来に「高松北中の誇るOB」になるかもしれない。若くして注目されて伸び悩んだり道を外したりする例も多々あるが、滅多にない私の“推し”だから、そこんところはよろしくね(笑)。