こんなことをしたらあんなことになる(笑)。

 人生も晩年に差しかかってきて残りの食事の回数が減ってきたこともあって、近年の我が家の外食は、
(1)味も、店の雰囲気も、店員の接客も、なるべくハズレに当たりたくない。
(2)できれば顔なじみの店で軽口の一つも交わしながら、なるべく楽しい食事の時間を過ごしたい。
の2つがメインコンセプトになっている。ま、私だけがそう思っている可能性も高いが。

 「私の外食」でなくて「我が家の外食」と書いたのは、私はここ20年来(もっとかもしれんが)、特に夕食は99%以上、家内と2人で出かけているからである。家内を伴わない夕食は大学の慰労会とか仕事関係の会食が年に1~2回あるかないかで、あとは昼に仕事の合間に1人でうどん屋に行くぐらい。かつてタウン情報の編集長~社長時代に「通常の食事は情報収集のためになるべく新規の店に行く」、「交友を広げるために会食は呼ばれたら必ず行く」という日々を20年以上やってきた私であるが、年齢と立場が変わって人生観もそれなりに落ち着いてきたら、それに伴って“外食スタイル”も変わってきたというわけである。

 何年か前、久しぶりに旧知の新聞社の方に会ったら、「田尾さん、時々街で見かけるんですけど、いつも奥様とご一緒ですね。それを見て、私もなるべく夫婦で食事に出かけるようにしてるんですよ」と言われたことがある。何かのお役に立てたのでしょうか(笑)。しかし一方では、これまた久しぶりに高校時代の友人と会う機会があってあれやこれやと近況を話してて、「いつも夫婦で食事に行っている」と言ったら「それが奥さんのストレスになっとんちゃうか?(笑)」と言われて、思い当たる節も無きにしも非ずで(笑)、まあなかなか難しい案件ではあるが、とりあえず毎日それなりに満足しているのでええか。

 というわけで、こないだの土曜日の夜、夫婦で外食をした後、「グランドファーザーズ」に立ち寄ったのである。我が家は夕食で外食した後、ちょっとどこかに寄る時はここ数年、上記(1)と(2)のコンセプトに従って「NAKAZORA」と「グランドファーザーズ」の二択になっている。比率は「NAKAZORA」が8~9、「グランドファーザーズ」が1~2ぐらいであるが、今日は「グランドファーザーズ」の近くで食事をして「ちょっと何か飲んで帰るか」となったので、そっちへ行った。

 しかし、私も家内も酒を飲まないので、家内はコーヒー、私はいつものマンゴーソーダ(笑)をオーダー。マスターや若いイケメンスタッフと向かい合うカウンター席に座って、「家のキッチンをやり替えるのに、排水口がドロドロになっているのを業者さんに見られたら恥ずかしいから事前に必死で掃除した」とかどうでもいい話で盛り上がっていた時、ふと今、阪神がソフトバンクと試合をやってることを思い出した。そこで、スマホを取り出して途中経過を確認しようとしたその時、スルッと手がすべって、ちょっと高いカウンターからスマホが木の床に落ちて「バン!」という大きな音を立てた! スタッフや客が一斉にこっちを振り向きました。

 スマホが角から落ちたのではなく、平面が完璧にそのまま、バウンドすることなく、落ちたところに張りつくように落下したため、ものすごい音がしたのだ。言うなれば、ゴルゴ13が35階建てのビルの屋上から飛び降りて落下途中でガラス越しに標的を狙撃してそのまま下の水深1メートルの貯水槽に飛び込む時、体を二つ折りにして指先とつま先が水面に着いた瞬間に一気に体を伸ばして“超ハラボテ”で「ズパーン!」と入水した時のような、あともう一回、「震える修験者」の回でも同じことをやっているが、あの時の入水状態と同じような落ち方だと思っていただければわかりやすい(わかりにくいかもしれない)。

 大きな音を聞いて、イケメンスタッフの兄さんが「大丈夫ですか」と言ってカウンターから出てきてスマホを拾ってくれた。確認したら、上向きで落ちたために画面にヒビ割れはない。とりあえず一安心して、「すんません」とか言いながら動作確認を兼ねてプロ野球のサイトを開いたら、阪神が6点取られて負けていた。「家の写真立てが落ちて割れたら、知人が何か不幸な目に遭っている…とかいう映画かドラマのシーンは、ほんまにあるんや」と思った。

 その後、家に帰って明るいところでスマホを見たら、うわ! 裏側にヒビが入っとる! 大学で学生が何人もヒビが入ったままのスマホを使ってるのを見て「お前ら、どんなことしたらそんなことになるんや!」というツッコミを何回か入れたことがあるが、こんなことをしたらあんなことになるのね(笑)。というか、どんなオチや。