この歳になって、こんぴらの石段はきついわ。

 16日の火曜日に久しぶりにこんぴらさんの本宮まで登ったら、4日経ってもまだふくらはぎのパンパンが取れん。

 経緯はこうだ(名探偵モンク風に)。四国学院大学は7月と8月がいわゆる「夏休み」であるが、『インタレスト』はlatter号が12月1日発行なので、毎年7~8月は情報収集と編集企画の進行や修正に追われる時期になる。従って、夏休みではあるが毎週、基本的には毎週水曜日に首脳陣や各特集の担当チームが集まって何かゴチャゴチャやっているのだが、今週は訳あって、火、水、木の“3連投”となった。その初日の火曜日に、不本意にもこの歳になって学生らとこんぴらさんに登るハメになったのである。

 火曜日の朝、特集の進行状況の確認と翌日の特集チームを集めたミーティングの事前打ち合わせということで、前号編集長で今号助監督に就任した安藝と今号編集長になった佐野と私の3人が午前10時に大学に集合。そこで打ち合わせの前に佐野がどうしてもと言うので、仕方なく、教育の一環として、「がもう」と「田村」と「山越」をハシゴすることになった(どんだけ行くんや!)。ほんで合計「小3杯と天ぷら3つ」を食って腹パンパンになって「山越」から善通寺の四国学院大学に帰る途中、あれを思い出したのである。

田尾「ちょっと寄り道してええか?」

佐野「いいですよ。どこですか?」

田尾「こんぴらの参道にある『にしきや』で『ザ・ピーナッツ』を買って帰りたい」

安藝「あ、前言ってたやつですね」

 前言ってたやつだ(笑)。「にしきや」は豆商品としては「しょうゆ豆」がたぶん主力だと思うが、その後、スピンオフ商品で「大豆のしょうゆ豆」(本来のしょうゆ豆は「そら豆」)を出したところ、私にクリーンヒット! さらにその後、今度は「ピーナッツのしょうゆ豆」を出して私にフェンス直撃のツーベース級の衝撃をカマして、そのマニアックな職人技を称賛した私が「しょうゆ豆界のダイドードリンコ」の称号を与えたというほどの(ま、一般人にはまことにわかりにくい“称号”ではあるが)目の離せない「にしきや」の、現在絶賛「マイブーム(死語か)」中の『ザ・ピーナッツ』である。

 そんな『ザ・ピーナッツ』には、多くの皆さんがお気づきのように「ネーミングがいかがなものか」という難点が1つあるが(笑)、これは「そういう狙いだ」と思えば受け入れられなくもない。しかしもう1つ、私にとって辛いのは、このネーミングを吹き飛ばすほどうまい『ザ・ピーナッツ』がおいそれとその辺のスーパーや産直の店に置いてないことである(少なくとも私は、仲南の名店「山内うどん」の店に入ってすぐ左のガラスケースの上にあるやつしか買ったことがない)。そこでこの日、せっかくこっちの方に来たということで、「山内」はもううどんが4軒目になるので断念して、しかし「帰り道のこんぴらの『にしきや』にはあるだろう」ということで、『ザ・ピーナッツ』を買うためだけに、あの観光地単価の「豆より高い駐車場」を払ってこんぴらの駐車場に車を停めたら、佐野が「こんぴらに登りましょうよ」と言ってきたのである。

 悪魔のささやきであった。「年相応に、無理しない」ということを心がけている近年の私であるが、1~2カ月に1回程度とは言え峰山(正確には紫雲山や石清尾山)に登って2~3時間“徘徊”していることもあって、あと、佐野が丸亀に住んでいるというのに「こんぴらさんに登ったことがない」などとたわけたことを言うので、「しょうがない、一緒に登ってやるわ」と言ってしまった。ちなみに安藝は高知出身であるが、「登ったことがある」と言う。聞くと、大学のバンド活動の打ち上げで酒を飲んだ勢いでみんなで登ったそうであるが、20歳を超えていたのでお咎めなしだ(と、軽く時事ネタもかすめておいてと・笑)。

 というわけで、教育の一環として(もうええか)、私なりの「こんぴらさん」の歴史とウンチクを披露しながら、途中休憩することもなく、汗だくになって、本宮まで登ってきたのである。

*****

田尾「100段ぐらい上がってきたけど、その先のマンホールのフタ見てみ? 『駐車禁止』って書いとるやろ。どこの車がこんなとこまで上がってくるんや」

安藝「ほんとだ」

*****

佐野「上まで何段あるんですか?」

田尾「本宮まで785段と書いてあるけど、その先の石段の1段目見てみ? 平面のコンクリートの真ん中が盛り上がって1段目につながってるけど、左右のコンクリート面が下がってて、そこに下の石段が見えてるやろ」

佐野「ほんとですね」

田尾「すると、真ん中を歩いたら1段目やけど、端を歩いたら2段目になる。こういうのが2カ所あるから、ここをどうカウントするかによって2段の差が出てくるんや」

佐野「785段いうのは、そこをどう数えてるんですか?」

田尾「たぶんあの半分隠れた石段はカウントしてない」

田尾「あと、本宮から先に奥社があるけど、本宮から奥社までは583段で、合わせて1368段というのが通説で、本宮の横にその数字を書いた立て札が立ってて、旅行雑誌やサイトも全部その数字を紹介してる。ところが、10年ぐらい前に『インタレスト』で段数を数えたら、本宮から奥社まで613段あって通説より30段多かった(笑)」

佐野「数え間違ったんじゃないですか?」

田尾「俺も数え間違いやろと思って別の日にまた学生数人で数えに行かせたら、やっぱり613段あったんや。そやからそれを『インタレスト』の16号に載せたら、その後、どういう経緯があったんか知らんけど、今、本宮の横に立ってた石段数の表示板がなくなっとる(笑)」

佐野「何かまずいことしたかもしれませんね(笑)」

田尾「奥社までの石段を30段剥がして数を合わせるのも大変やから、この話はなかったことにしよう(笑)」

*****

安藝「あ、馬がいますよ」

田尾「神馬(しんめ)や。一応神様が乗る馬とされとる」

佐野「先生、何でも知ってますね」

田尾「ちなみに、2頭おるうちの右側の1頭はサラブレッドの『ルーチェ』号で、『父・マヤノトップガン』って書いてるやろ? 実は以前は『トウカイスタント』いう馬で、父が『ホリスキー』だったんや」

佐野・安藝「……」

田尾「この連動性、わかるか?」

佐野「何言ってるかわかりません」

田尾「ホリスキーは1982年の菊花賞馬、マヤノトップガンは1995年の菊花賞馬。すなわち、菊花賞馬の子どもばっかりがここに来とるという奇跡や」

佐野「それ、覚えてて役に立ちますか?」

田尾「そこはそれ、使いようによるがな」

*****

 などという小ネタを20本以上繰り出してみたが、「教育の一環」になっとんやろか(笑)。ちなみに、峰山に何回登っても張らなかったふくらはぎがパンパンになったことで、峰山とこんぴらの石段では使う筋肉が違うことが確認されたことを付記しておく。付記するほどのことではないが。