山下、あと一歩。

 以前の「羽生善治」に続いて、団長日記の「あと一歩シリーズ」第2弾(笑)は、オリンピック女子ゴルフの山下美夢有(みゆう)。

 惜しかったな。金メダルが10アンダー、銀メダルが8アンダー、銅メダルが7アンダーで、山下は6アンダーで4位タイだったが、出だし2番で首位タイになったのに前半最後の9番でダブルボギー、後半14番、15番連続バーディーでトップが見えたのに次の16番ショートで池に入れてダブルボギー。ということは、あのダブルボギー2つのうち1つをパーで切り抜けてたらプレーオフで銀か銅、2つともパーで切り抜けてたら金か銀が獲れてた。

 「勝負に“タラレバ”はない」とか言う人が結構たくさんいるが、それは「勝負の結果は変わらない」と言っているだけで、そこで終わっちゃ、ただの「思考停止」である。例えば、我々観戦者は試合中に「グリーンの奥に付けたらパットがメチャメチャ難しくなるぞ」とか「ここでバーディーを取れればトップに並ぶぞ」とか、“タラレバ”の連続で一喜一憂しながら見ているわけだし、選手もたぶん、同じように考えることがあると思う。

 また、試合後も「9番のグリーンで3パットしなければ…」、「16番で一つ上の番手で打ってたら…ちょっと強く入れていれば…」とか、あれやこれや“タラレバ”で振り返るのが楽しいし、物書きなら観戦記や評論に厚みを増すためには“タラレバ”が不可欠だし、選手もその後の成長に向けての努力の出発点に“タラレバ”を起点とした反省や分析が不可欠になる。「歴史に“if(もし)”はない」などと言うのも同じようなもので、「もしこうだったら」と考えることによって歴史の分析も深くなり、「歴史に学ぶ」ためにもそれは不可欠である…と大きく展開しかけたが、そんな大層な話に持って行くつもりはないので山下に戻る。

 私は今のところ、「オリンピックは甲子園(高校野球)よりは興味があるが、毎日一喜一憂するほどの興味はない」という、世界中の感動好きな方々から見れば人格すら否定されそうな存在ではあるが、今回のオリンピックでは全ての日本人選手の中でほぼ唯一、山下だけちょっと応援していた。理由は、テレビで見る限りの印象ではあるが(1回だけ、去年松山で行われた『エリエールレディスオープン』で本人のプレーをちょっとだけ見たが)、いつも言っている「佇まいがええ感じ」だからである。

 何がどういいのかについては、言葉ではとてもうまく全貌を表現できないので、表現しようと試みもしないでおく。とりあえず、羽生善治と武豊の佇まいにはまだ及ばないが、また福間(旧姓里見)香奈や藤田菜七子や岡本綾子とは佇まいの方向性がちょっと違うが、あるいは、女子プロゴルフ界では山下美夢有(身長150cm)、西村優菜(身長150cm)、古江彩佳(身長153cm)の「世界で活躍するちっちゃい日本人トリオ」を応援している中、山下は西村と古江とは佇まいの方向性がちょっと違うが、いずれにしろ私の中では「いい佇まい組」の一人ではあるのである。

 あと、「のび太」。「のび太」と言っても何のことだかわからないと思うが、今回金メダルを獲ったリディア・コのことを、我が家では「のび太」と呼んでいる(笑)。理由は今から12年前、リディア・コが15歳でアメリカツアーに勝って衝撃のプロ生活を開始した頃、『ドラえもん』の「のび太」みたいなメガネをかけてプレーしていたからである。以来、私はずっとリディア・コを「のび太、のび太」と呼びながら、わが子のように見守ってきたのである(本人には迷惑な話だろうが・笑)。それが、20代を過ぎた頃から「のび太」は大人になってきて、今回出てきたらすっかり「のび太」でなくなっていた。

田尾「最終日、のび太がトップや」
家内「どれ? これ? のび太、こんなになったん!」

 リディア・コ、すまん。高松で見守ってるだけやから、SNSに誹謗中傷も書き込まんしストーカーもせんおっちゃんやからこらえてくれ(笑)。という、私のオリンピック雑記であった。さ、今日からまた仕事しながら阪神を応援しよ。