丸亀の「渡辺」は今、麺と女将が研ぎ澄まされている(笑)

 昼前、日曜日だというのに家内が「『日の出』に行こう」という無謀なことを言ってきたので、「日曜日の『日の出』はあかんやろ」と言ったのであるが、「でもゴールデンウィークも終わったし」と言うから、「まあ、あかんかったらそこから丸亀方面へ行ったらどこかに入れるか」と思って午前11時50分に高松の自宅を出たのである。ほんで高速に乗って12時25分に「日の出製麺所」に着いたら、店の前から駐車場の中まで行列ができとるやないの! 家内が目が点になりながら行列の写真を撮って「日の出」の女将さんに「今来たけど侮ってました。また出直します」いうてLINEを送って(笑)、一応まあ想定内の出来事なので、落ち着いて冷静にそこから丸亀方面に向かった。

 こっち方面の家内のお気に入りは、「おか泉」、「山とも」、「中村」、「渡辺」、ちょっと離れて飯山の「なかむら」あたり。途中、「長楽」が日曜定休日であることを確認し、さらに西へ進んで「おか泉」の間を通ると、敷地の外に出そうなところまで行列。続いて「山とも」は臨時休業なのか、のれんが出ていない。「これは『中村』もダメだろう」と思って次の交差点を左折し、数分走って12時40分に『渡辺』に着いたら、こっちも店の前に10数人が並んでいた。

 どうする? 一般店の10数人は30分ぐらいかかりそうやぞ。かといって、今から飯山の「なかむら」に突撃したら1時には着きそうやけど、以前、日曜日の1時30分に「なかむら」の前を通ったら「本日終了」の看板が出とったから、大行列があったらアウトかもしれん。1時に「なかむら」でアウトになったら、そのまま“うどん難民”になる恐れがあるけど、どうする? 「渡辺」は久しぶりやし、「3時には家に帰って酒かっくらいよる」言いよった女将さんもまだおるかもしれんから(笑)、待つか? ということで、店頭のタッチパネルで番号の紙をもらって、10数人の待ち客と一緒に表の床机に座って待つことにした。

 私は基本的に待ち時間が長そうな店は行かないのだが、家内は少々待ってもお気に入りのうどんを食べたいタイプなので、“並ぶことが想定される店”に一緒に行く時はたいてい私は時間つぶしの文庫本を持っていく。今日はジェフリー・ディーヴァーの「コルター・ショウ」シリーズの文庫版第一弾の『ネヴァー・ゲーム』の下巻だ。半年ぐらい前に出たのをすぐに買って読破したのだが、近年すっかり「老人力」が付いて、こないだから仕事の合間に2回目をちょこちょこ読み始めて上巻を読み終えて下巻に入ったというのに、「どんなどんでん返しが来るのか!」とワクワクしながら読み進めておりました(笑)。

 その途中でふと周りを見たら、半分以上のお客さんがスマホを見ていた。近年、片時もスマホが手放せない老若男女が激増していて、それに「いかがなものか」と苦言を呈する方々がたくさんおられるが、よく考えると、私はちょっとした待ち時間に「片時も文庫本が手放せない」という昭和のおっさんであることに気がついた。それは基本的にスマホと文庫本が違うだけで、同じようなことではないのかと(笑)。「スマホでしょうもないものを見る」のと「本で小説や教養書を読む」のとでは全く違うと言われるかもしれないが、「スマホで小説や教養書を読む」のと「しょうもない本を読む」のとどっちがどうなのか? と問われると一瞬答えに詰まってしまうのではないか…ということで、まあスマホでしょうもないことに時間を費やしている人の比率の方が高いのかもしれないが、何事も善し悪しを2択で決めつけない方が思慮が深くなるような気がする…とか考えていたら番号を呼ばれたので、店に入った。

 入ったらすぐ、以前はバイトの兄ちゃんかと思うような出で立ちで働いていたのに近年前掛けなんかしてすっかり「大将」の雰囲気が出てきた大将(笑)が「あ」いうてリアクションしてくれて、厨房の中で背中を向けて働いていた女将さんに何か言うたと思ったら女将さんが振り返って、「あらー! 遠いのにわざわざ来てくれたん!」と声を掛けてきた。店内に人がいっぱいだった上に外向きのカウンター席を案内されてたので「日の出と長楽とおか泉と山ともと中村がダメだったから来た」というネタを繰り出せなかったが(笑)、私が肉ぶっかけといなりとおむすびと家内がカレーうどんを頼んで、しばらくしてやって来たうどんを見て飛び上がった!(飛び上がってはないけど)

 麺の姿が美しい! さらに、一口食べると、姿の美しさをさらに上回るクオリティの高さ! 去年来た時も「めちゃめちゃいい麺になってきとるやないの!」と言ったのだが、それを上回る創業以来最高の麺(団長比)が出ているではないか。頻繁に来られないのでいろんなメニューを試してはないが、あの麺を最高にうまく食べられるメニューをいずれ発見しなくてはならないと思いながら満足度110%で食べ終えてレジに行ったら、レジを打ってくれている大将の横に女将さんがいつもの満面の笑みで出てきた。

田尾 いやー、すごい麺が出よるわー。今年食べたうどんの中で1番の麺や。
女将 ほんまな! ありがとー!(笑)
田尾 これはラジオで言うとかないかんと思たんやけど…
女将 言うて言うて!(笑)
田尾 それが、昨日が収録で4本も録ってしもて、次は1カ月後やからたぶん忘れる。
女将 なんでな!(笑)
田尾 去年来た時に仕入れた「女将さんが3時から酒飲んみょる」いうネタもまだしゃべってないがな。
女将 もー、言うて言うて!(笑)

 以前からH谷川君が「渡辺ファミリーの店は先代の大将がメチャメチャしっかりと麺作りを叩き込んでるから、どこも麺のクオリティが高い」と言っているが、その基礎の上に個人の性格とセンスがいい感じで花開いているというのが、皆さんメニューにはいろいろ好き嫌いがあると思うが、“麺食い”の私の感想である。丸亀の「渡辺」の麺と女将、研ぎ澄まされて絶好調である(笑)。