鳥に始まり、鳥に終わってみたが。

 話は3日前に遡るが、遡ったからと言っても大してオチのある話ではないので注意。木曜日の夕方、家の仕事部屋でいろんな締切モノに追い込まれながら17:30頃、ちょっと一休みしてベランダに出たら、カラスが帰宅を始めていた。

 私の仕事部屋の外の狭いベランダは東向きで、夕方になると上空を結構な数のカラスが東に向かって飛んで行くのが見える。時間は季節ごとにほぼ決まっていて、この時期はだいたい17:30頃から18:00頃にかけて、1羽ずつだったり、3羽4羽と固まっていたり、時々10羽以上の団体だったり、いずれも高松市街地の上空から屋島の南あたりに向かって飛んで行くのであるが、この日はその30分ぐらいの間に、392羽が東の空に飛んで行った。

 「数えたんか!」というツッコミには、「数えた」と答えておく。私は仕事の途中でベランダに出て、空や海や市街地を見ながら頭をクールダウンさせることがよくあるのだが、それがカラスの帰宅時間に出くわした時は、たいてい数を数えている。これまでの最多記録は437羽であるから、たぶんヤツらは400羽ぐらい、昼間は西の方に行って何かしてて、夕方になったら東の方へ帰っているのである。ただし、あのカラスたちのねぐらがどこにあるのかはわからない。とにかく屋島の南方向に向かって飛んで行くのだが、どこで下りているのかは見えたことがない。

 ちなみに、カラスに混じって時々、ムクドリの大集団が同じように東に向かって飛んで行くが、あいつらのねぐらはわかっている。高松市中心街のど真ん中、中央通りの中央分離帯にズラッと並んでいる街路樹のクスノキの中である。あいつらも昼間はどっかに行ってエサでも食ってるのだろうが、夕方になると大群が中央通りのクスノキに帰ってきて、うるさい上にフンをする。私は夕方以降に中央通りの分離帯側の車線を走っていて何度もフンを落とされたことがあるので、今はよっぽどの状況に追い込まれない限り、中央通りの最内車線は走らないことにしている。

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 というわけでカラスとムクドリはさておいて、本題はここからである。ただし、本題と言っても大した話ではないので注意である。注意せんでもええが。

 翌日金曜日は訳あって観音寺に行く用事があったのだが、木曜日の時点で私の車はガソリンがかなり減っていて、我が家から観音寺の用事の目的地まで40キロぐらいあるので、出発までにガソリンを補充しておく必要があった。同時に、車がまあまあ汚れていたので洗車もしておこうと思ったのだが、木曜日は「曇り時々雨」みたいな洗車にはあまりよろしくない天気で、予報を見ると翌日金曜日は晴れるみたいだったので、私は金曜日の朝に「ガソリン満タンと洗車」をしてから出発することにしたのである。

 金曜日の朝、外は曇り空だったが、予報によればここから天気は回復に向かうはずなので、私は家の近くのガソリンスタンドに行って「満タン洗車」を頼んで、休憩室でパソコンを開けて『インタレスト』最終号の第3特集の構想を練りながら待っていた。そして30分後、「満タン洗車」が終わって車に乗り込んで、観音寺に向けてスタンドを出た瞬間、雨が降ってきたやないの! しかも、西インターに乗るまでにワイパーが出動せないかんぐらい降ってきたやないの!

 ところが、西インターから高速に乗って観音寺に向かい始めると、雨はすぐにやんだ。ずーっと西の方の空を見ると、青空が見えている。観音寺に着くと、雲はあるが薄日も差して、もはや雨の気配は全くない。どういうことやねん。俺がガソリンスタンドを出て西インターに乗るまでだけ雨が降ったんか!

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 などという久しぶりに劇的な「洗車したら雨」に見舞われたのであるが、穏やかな好天の観音寺で12時過ぎに無事用事を終えた私は、ちょっと時間が空いたので観音寺にいる私の数少ない友人のO船に電話した。するとO船が「今、連れと昼飯食いに出とんじゃ」言うので、30分後に観音寺の港のそばの灰皿のある昭和の喫茶で落ち合うことにした。

 集合したのはO船とミッチョと髙GとG田と私の5人。O船とミッチョと髙Gは高校時代の同級生で、G田くんは1年か2年後輩であるが、全員古希を目前にした昭和のオッサンである。

ミッ「田尾の本買うたけど、最初の方がめんどいきん進まんが」
O船「ミッチョ、田尾の本買うたんか」
ミッ「おお」
O船「ほな、読んだら貸してくれ」
G田「買いましょうよ! ほんで、読んだら貸して下さい」
O船「お前もやないか」

みたいなテイストの昭和のオッサンが、昔話やバカ話や、観音寺の現状と未来の考察や、唐突に家電業界の現状と将来についての意見交換なんかをしながら1時間半ぐらい費やしたのであるが、解散しようとして表に出たら、O船があるものを見つけて言った。

O船「田尾、お前、車に鳥のフンが落ちとるぞ」
田尾「なんでやねん! 今朝洗車してきたばっかりやぞ!」
O船「観音寺を侮ったらいかんが」

 トランクから小さい雑巾を取りだして、後部座席左側のドアノブに引っかけられた鳥のフンを拭き取ろうとしたら、すっかり晴れ上がった天気のせいか、完全に干からびて乾いた雑巾では拭き取れん。私は雑巾を持って店に帰り、「ちょっとこれ、濡らしてくれますか?」言うて雑巾を濡らしてもらってなんとか拭き取った…という、何というか、鳥で始まって鳥で締めてみたが、どうか。どうかと言われても困るが。